こんにちは!
皆さんは研究論文と聞いて、学者さんや研究者さんしか読めない難しい文章なのではないかと勝手に思い込んではいませんか?
確かに難しい記号や数字が並んでいて難しそうに見えますが、実は読み方を変えるだけで案外簡単にその論文が言いたいことが分かります。
今回はそんな研究論文の読み方について紹介したいと思います。
※研究論文は英文のものを想定としていますので、構成は英語で表記させてもらいます。
研究論文の重要性
まずはなぜ研究論文が重要かを簡単に述べたいと思います。
研究論文には科学に基づいて研究したデータとその考察が記されています。
つまり、誰かが適当に言っている物ごとよりも信憑性があります。
例えば、炭水化物ダイエットは女子高校生に効果抜群という記事が出回ったとします。
たった1人の女子高校生が適当に炭水化物を抜いて痩せたことを記事にしているだけであれば、”別の女子高校生が同じこともやっても同じ結果になるか?”という問いに対して証拠が不十分です。
しかし、5人の女子高校生が1週間炭水化物の摂取量を1日50グラムと設定して実際に痩せたのなら、信憑性は格段に上がるわけです。
今のは一例ですが、根本的な研究のやり方は変わりません。
女子高校生にだってその気になれば研究論文を書けるのです。
研究論文の基本的な構成
研究論文にも色々な種類がありますが、今回は一般的な研究論文を想定します。(Meta‐analysisやCase studyは構成が異なります)
以下が構成とその順序になります。
1,Abstract
研究論文のIntroduction、Method、Result、Conclusionをそれぞれ2~3文ぐらいずつにまとめた1つのパラグラフになっています。
短くなっていますが、その分難しい言葉が使われていることが多く、初心者が読むと混乱を招きます。
論文全体の流れをつかむ程度でサラッと流しましょう。
2,Introduction
引用のオンパレードなので、文の最後にかっこでくくられている数字に引っ張られず、書いてあることに集中しましょう。
大抵の場合はこんな事が書かれています。
”研究テーマは理論的には、こんな感じです。~博士もそう言ってるし”
”私達は別の研究方法でこのテーマを探ります”
”別の研究チームはこんな結果が出てますが、実際はどうなんでしょうかねぇ”
本題に入る前の予備知識として頭の片隅に入れる程度でOKだと思います。
また、Introductionの最後の段落は研究の目的が書かれていることが多いです。
目的を把握しておくと研究論文の最後のConclusionを読んだときにポイントがズレないので、しっかりと把握しておきましょう。
3,Method
書いてある内容は、
- Participants
- Instruments
- Procedure
- Deta analysis
Deta analysisはデータをどのように解析したかの説明です。統計学が分からない人には何が何だかさっぱりだと思うので、あまり深読みしなくてOKです。
4,Result
データを解析して出た結果が記されていますが、数字と統計記号のオンパレードです。
ここも統計学が分からない人は深読みしなくてもOKです。
5,Conclusion(Disscussion)
研究論文を読むうえで一番大事なところです。
ここに全てが詰まっているといっても過言ではありません。
ここを読んで、この研究論文が何を言いたいのかを読み取りましょう。
大抵、最初の段落に結果の翻訳を書いて、次の段落でこの研究の駄目なところ(Limitation)が書いてあって、最後の段落で次はこんな感じでやりたいです。みたいなことが書かれていることが多いです。
要するに
研究論文の題材を見て、Introductionで予備知識と目的を確認して、Conclusionでこの論文が何が言いたいのか確認すれば大体の内容が分かっちゃいます。
あの長い論文を端から端まで読む必要はないわけです。
私の研究論文を例に論文を読んでみましょう
Females tend to have a lower VO2max than males, while there is an inverse relationship between body mass index (BMI) and VO2max. To date, there has been no research describing how the interaction of gender and BMI affects VO2max levels.
RESULTS: VO2max (r=-0.48, p<0.05) and BMI (r=-0.29, p<0.05) were found to be negatively correlated with gender. There was also an enhancing moderation effect [β=0.26; F(3,70)=8.69, p<0.01], while R2=0.27.
DISCUSSION: Our results are consistent with previous studies reporting negative relationships between gender and VO2max, as well as BMI and VO2max (e.g., Mondal & Mishra, 2017). Concerning the moderation analysis, the model explained 27% of variability in VO2max. In addition, female students who have higher BMI have lower VO2max than female students who have lower BMI. VO2max is an indicator of CRF level. Therefore, female students are encouraged to lose weight in an effort to improve their CRF level and ultimately, decrease their risk of premature death (American College of Sports Medicine, 2017). In terms of gender and nationality, the sample does not represent the SUNY Plattsburgh student body. In order to extrapolate the findings in different settings, similar studies should be conducted with more diverse groups of participants.
読み方
題名
このように題名は研究内容から少し捻ったものもあれば、直接的に書かれているものもあります。
私の研究の題名だと興味をそそるかもしれませんが、内容が入ってきてないのでIntroductionをしっかりと読みましょう。
Introduction
”VO2max is an indicator of cardiorespiratory fitness (CRF) level. Females tend to have lower VO2max than males, while there is an inverse relationship between body mass index (BMI) and VO2max. To date, there has been no research describing how the interaction of gender and BMI affects VO2max levels.”
(VO2maxは心肺機能の指数値です。女性は男性よりもVO2max低い傾向にありますが、VO2maxとBMIは反しあう関係にあります。性別とBMIがどのようにVO2maxに影響するのかについての研究がありません。)
と書かれています。
本来なら、引用が多数入るのですが、カットしてあります。
ここで出てくる難しい専門用語はVO2maxくらいだと思います。
VO2maxとはその人が最大でどのくらい酸素を吸えて、体内で使えるかを表したものです。
ちなみにBMIは肥満を測るときによく出てくる例の指標(数字)です。
続いて目的(Purpose)です。
”the purpose of this study was: a) To confirm the two aforementioned negative relationships and b) To explore the moderation effect of BMI on the gender-VO2max relationship in a collegiate environment”
(この研究の目的はA)前文に出てきた2つの反する関係性を確認することとB)BMIが性別とVO2maxにどの様に影響するか調べることです)
と何やら難しいことが書かれていますが、この研究の目的が2つあることと性別、BMI、VO2maxの3つが絡んでくることが分かればOKです。
MethodとResult
解説を知りたい方は別記事にこの論文の解説をまとめますので、そちらをご覧ください。
Conclusion
(私達の結果は以前に別の研究で行われた性別とVO2max、BMIとVO2maxの反する関係性の結果と一致した。)
どうやら、1つ目の目的である関係性の確認が取れたようですね。
そして、その次の文に何やら難しい数字と単語が並んでいますが、よく見ると
”Female students who have higher BMI have lower VO2max than female students who have lower BMI”
(BMI値が高い女学生はBMI値が低い女学生と比べてVO2maxの値が低い)
と書かれています。
2つ目の目的であったBMIと性別がどのようにVO2maxに影響を与えるかが書いてありますね。
これで2つ目の目的もクリアです。
そして、その文の直後にこの研究論文で一番伝えたいことが書かれています。
”Female students are encouraged to lose weight in an effort to improve their CRF level and ultimately, decrease their risk of premature death”
(女学生は体重を減らし、心肺機能を上げることで寿命が縮むリスクを下げられる)
このことから極論、”寿命を縮めたくなかったら体重を減らしたらいいんじゃない?”って信憑性をもって言えるわけです。
いかがでしたでしょうか。
今回はちょっと難しいテーマになってしまいましたが、学生なら研究論文を引用してエッセイやプレゼンに加えるデータの信憑性を上げるのは必須だと思います(専攻にもよります)。
また、研究論文に記載されている信憑性のある情報を選択することによって自然と不確かな情報との区別がつき、考え方や思考が効率的になります。
気を付けてほしいのが、全ての研究論文が今回の例題に沿っているわけではないので、ケースバイケースで読んでみて下さい!
読み込んでいくうちにパターンが掴めるようになってくると思います。
それではまた!